あるところにたいへんりっぱなきんめだいさんがおりました。きんめだいさんはたいへんおおきくてきれいなおめめをしておりましたので、いつだってそれを自慢しておりました。
「やあ、このおおきくてきれいなめがあればなんだってみえるのだ」
ある日のこと、きんめだいさんはあんまり遠くばかり眺めるものですから、くたびれて近くにあったおさらの上で休むことにしました。
「このお皿はやけにひんやりとしているなあ」
「きんめだいさん、きんめだいさん、たいへんからだがおつかれでしょう。あまいものをたべるとげんきがでてきますよ」
ふときんめだいさんが声のする方を見上げると何か粉のような物がこちらを見ています。
「だれかはわからんが、それはたすかるなあ」
だけれどもあんまりくたびれていたきんめだいさん、こぼれてしまったおさとうさんを全身にあびてしまいました。
次に現れたのはしょうがさん。
「きんめだいさん、きんめだいさん、たいへんおめめがおつかれでしょう。ここは眩しいですから、まぶたを隠してさしあげましょう」
きんめだいさんは声のする方を見ましたが黄色い何かがこちらに向かって何か叫んでいます。
「おやおや、誰かは知らないが助けてくれるというならやっとくれ」
しょうがさんはあっというまにたくさんの細い束になり、きんめだいさんの大きいお目目をかくしてあげました。
「これはいったいなんだろう。めがぽかぽかしてきもちがいいなあ」
次に現れたのはくじょうねぎちゃんでした。
「きんめだいさん、きんめだいさん、このまま眠ってしまっては風邪をひいてしまいます。わたしがおふとぅんになってさしあげましょう」
「やや、これはこれは、どなたかしらんがありがたい、どうもこのお皿はひんやりとし過ぎているのでぽかぽかするのはとっても嬉しい」
「なんだかねむたくなってきたなあ」
くじょうねぎちゃんのおふとぅんにくるまったきんめだいさんでしたが、いつしかぐっすりとお皿の中で眠ってしまいました。
きんめだいさんは眠りにつきながらなんだかからだがぽかぽかとあたたかくなるのを感じました。
そうです。お皿だと思っていたのは実は炊飯器のお釜だったのでした。
きんめだいさんは次第にぽかぽかといい気分になりまして、くじょうねぎちゃんに話しかけました。
「くじょうねぎちゃん、くじょうねぎちゃん、どうやらここはとっても熱いねえ。こう熱くてはぼくのおめめは白く濁ってしまうよ。こう濁っては、これまでのようにきれいにものが見えるか心配だねえ」
「でもきんめだいさん、あなたは初めてわたしのことをくじょうねぎちゃんと呼んでくれているではございませんか」
「きんめだいさん、きんめだいさんのおめめはあんまりきれいだったものですから、光が全て通り抜けてしまっていたのです」
「あなたのそのきれいでおおきなめには光が映ってはいなかったのです」
きんめだいさんは驚きましたがくじょうねぎちゃんの言う通り、おさとうさん、おさけ嬢、しょうゆオヤジにみりんくんが、周りできんめだいさんのことをずっと暖めてくれているのが、今でははっきりと見えるのでした。
「そうだったのか。わたしはこんなにも周りのことがみえていなかったのか」
おやまあ、きんめだいさんのおめめをごらんなさい。あたためられたおめめからおおつぶの涙がぽろんぽろんと、おかまの底を浸しました。
「でもきんめだいさん、わたしはきんめだいさんのそういうところもぜんぶずっとお慕いしておりました」
くじょうねぎちゃんはきんめだいさんにそっと寄り添っていいました。
「最後にこうして姿を見てもらえたことをたいへん嬉しく思います」
そして翌朝、きんめだいさんはたっぷりの汁気を吸って、ふっくらとしていました。
そのおめめは確かに濁っていましたが、きちんとひかりを受け止めて、らんらんと輝いていました。
お し ま い。
【世界名作童話】きんめだいさんとくじょうねぎちゃん
くぅ~疲れましたw これにて完結です!